身体と同様に、こころもエクササイズが必要。週に1本映画を観ることで、こころの筋肉をしっかりと動かし、”きれい”を活性化しませんか? そんな”きれいになれる”映画を毎週紹介する【うるおい女子の映画鑑賞】。第23回のテーマは「目撃型アートの刺激」をテーマに『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』(米・2013年)を紹介します。
『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』 DVD発売中 ¥3,800(税抜) 発売元:バップ (c)2013 RAVINE PICTURES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 2016年3月26日現在
|ヴィヴィアン・マイヤーって?
ヴィヴィアン・マイヤーは、今最も注目を集める女性写真家のひとりです。ですが、彼女はすでに亡くなっています。彼女は生きている間、15万点以上も撮りためていた作品を一度も公表することがありませんでした。ナニー(乳母)として生活を送る一方、街行く人々のストリート・スナップを撮り続けていたのです。
この映画は、その才能に世界が度肝を抜かれた謎の女性写真家を追ったドキュメンタリー作品で第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた秀作です。
|世紀の大発見?! オークションで落札された大量のネガ
ある若者が近所で開催されていたオークションで、箱いっぱいに詰まったネガを380ドルで落札することで、ヴィヴィアン・マイヤーという才能は偶然にも発見されます。現像してみてびっくり! それはパワフルでエネルギーのある優れた写真の数々だったのです。
衝撃を受けたこの若者が、ブログに写真を投稿して注目を集めたことからすべてが始まりました。この若者こそがジョン・マルーフ、この映画の監督でもあります。
|天才女性写真家のミステリアスな人生
監督はマルーフが写真を撮ったとされる無名の写真家ヴィヴィアン・マイヤーをインターネットで検索すると、死亡記事に辿り着きます。そこから彼は、在りし日のヴィヴィアンと接触した人々約100人に話を聞いてまわるのです。
ナニーだったヴィヴィアンは、これほどまでに力強く語りかける写真をこれだけの量撮っていながらも、なぜ公表することなくひっそりとその人生を終えたのか。「20世紀の写真史を書き換えたかもしれない」と専門家に言わしめる素晴らしい写真の数々とともに、謎に包まれた彼女の人生に迫っていきます。彼女の私生活は謎に包まれたようで、人々は彼女を「奇人」「変わり者」「ミステリアス」と評し、偽名を使って「スパイなの」と語っていたことも明らかになります。自分を見せずに、隠れて写真を撮り続けたヴィヴィアン・マイヤーとは何もなのでしょう。
|凄まじい才能の原動力とは?
ヴィヴィアン・マイヤーを探す旅のなかで彼女を知り、社会と断絶されたようなあやうい雰囲気や力強さといったその魅力に触れることで、不思議と彼女の写真たちが新しく別のことを語り出す、という奇妙で刺激的な体験をします。そしてやがて私たちぶつかるのが彼女の孤独や怒り、なんとか現実と繋がろうとするような強いエネルギーです。それはまさに、彼女の写真そのものに静かでパワフル。
偶然に大量のネガが写真を評価できる人間に発見され、驚異の執念と行動力でその価値を世に知らしめるという奇跡のような一連のシナリオを含め、ヴィヴィアン・マイヤーという類い稀な才能の持ち主が”写真の力”を最大限にドラマチックに世に知らしめるアートの一環のように思えるくらい素晴らしいドキュメンタリーです。そして、発見されずに眠っているアートが実は、そこら中にあるのかもしれないとワクワクさせれられる作品でもあります。
ひとりの女性の孤独、生命力、生き様、そして何より心揺さぶる写真に触れながら、刺激的な奇跡を目撃する体験、今週末「おうちシネマ」にいかがですか?
text:kanacasper(カナキャスパ)(映画・カルチャー・美容ライター/編集者)
↧