【うるおい女子の映画鑑賞】 第50回『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005年・米)
「女性」の視点で映画をみることは、たとえ生物学的に女性じゃなくても日常では出会わない感情が起動して、肌ツヤも心の健康状態もよくなるというもの。そんな視点から今回はリース・ウィザースプーンにアカデミー主演女優賞をもたらした『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005年・米)を紹介します。
いま世間を賑わしている「不倫」ですが、妻として何より怖いのが“火遊び”の浮気ではなく”本気”の純愛なのではないでしょうか。そして不器用で真面目な男ほど純粋ゆえの怖さもあったり…。そんなことを考えていて思い出すのがこの映画。
実在の1950年代カントリー歌手ジョニー・キャッシュを演じ、すべての楽曲を劇中自ら歌い上げるホアキン・フェニックスの全身全霊の芝居と、女性の包容力と太い生命力を体現し、同じくすべての楽曲を歌い上げたリース・ウィザースプーンの芝居に圧倒されつつ、不器用な妻帯者の純愛はかくも恐ろしき…な1本です。
|ストーリー
貧しい農村の家庭で育ったジョニーは、幼いころに兄を事故で亡くします。聞き分けがよく働き者の兄ではなく、自分が生き残ってしまったことにどこか罪悪感を抱きながら大人になった彼は、兵役中に独学でギターを習得し、除隊後結婚、妻の反対を押し切り音楽の道へとすすみます。
一躍人気者になった彼は全米ツアーに出ますが、そこで幼い頃からラジオ越しに憧れていたカントリー歌手、ジューン・カーターに出会い恋に落ちるも、ジューンはなかなか首を縦に振らず、ジョニーはドラッグに溺れていきます…。
※以下ネタバレが含まれます
|あなたは愛する人の“本当の理解者”になれますか?
結論をいうと、ジョニーとジューンは最後に結ばれ結婚し、その後仲良く生涯をともにする最高のパートナーになります。
出典:IMDb.com
結婚前、ドラッグに溺れ、転落人生まっしぐらのジョニーを最後まで見捨てずに受け入れたジューンとの美談でもありますが、これ、前妻の視点でみるとかなり辛い。子どもも家庭もそっちのけでツアーに出続けて、たまに帰ってきても作曲作業。そこまではいいとしても、ジューンに恋焦がれるあまり壁に彼女の写真を飾りだす夫…。
出典:IMDb.com
愛し合って結婚したはずのふたりの関係は、いつどこでボタンを掛け違ったのでしょうか?
前妻のセリフで印象的なのが「家では一切、ツアーやライブの話をしないで!“普通のこと”を話して!!」というもの。これはつまり、夫の生業を否定しているようなもので、“普通の父親”像をジョニーに求めるあまり、彼の心を前妻が理解しないようになってしまった結果、ジョニーは家庭で孤独を感じていたのです。
それに対し、小さいときからファミリー・ビジネスで歌手として巡業していたジューンは、等身大のジョニーを受け入れていきます。
|パートナーとの“つながり方”を見直したい
結婚している人は夫と、恋人がいる人はパートナーと「どんな風につながっているかをきちんと見直さなければ!」と思わずにはいられないこの作品。
特に夫(または彼)が、かまってちゃんタイプの不器用さんで、さらに孤独を抱えている少々面倒くさいタイプであればなおさら、この映画のジューンはお手本と言えます。彼と彼の進む道を信じて応援してあげて、そのまま受け入れてあげることから始めてみてくださいね。
text:kanacasper(カナキャスパ) 映画・カルチャー・美容ライター/編集者 top image出典:IMDb.com
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