身体と同様に、こころもエクササイズが必要。週に1本映画を観ることで、こころの筋肉をしっかりと動かし、“きれい”を活性化しませんか? そんな“きれいになれる”映画を毎週紹介する【うるおい女子の映画鑑賞】。
第10回のテーマは「このままのわたしでOK」。ご紹介するのは、いわゆる「ミニシアター系」といわれる小規模作品でありながら、作品の評価が高く、世界で35もの映画賞を受賞した良作『ショート・ターム』です。
『ショート・ターム』ブルーレイ発売中 ¥4,700(税抜) 発売元:ピクチャーズデプト 販売元:TCエンタテインメント (C)2013 Short term Holdings, LLC. ALL Rights Reserved. ※2015年11月27日現在
タイトルの『ショート・ターム』とは、家庭問題等の問題を抱えるティーンエイジャーたちが短期間保護されるグループホームの名前「ショート・ターム12」を意味します。主人公はこの施設で働く若い女性グレイスです。
【傷ついたティーンたちと冷静に辛抱強く向き合うグレイスはどこか陰のある女性】
グレイスたち職員はセラピストでも医者でもないので、ティーンたちが自傷行為を行ったり、施設から逃亡しないように、ただ”見守る”という権限しか与えられていません。実際に、彼らが施設外に逃亡しても、彼らの体に触れることは許されていません。ひたすら追いかけ、後ろをついて歩き、説得する以外に連れ戻す方法がないのです。
【”見守る”ことしかできないけれど、”見守る”ことは、たくさんの忍耐を必要とする愛でもあります】
グレイスは同じ施設の同僚メイソンと3年の恋人関係にあり、同棲中です。穏やかな愛に包まれたカップルのように見えましたが、妊娠が発覚することで彼女のなかの”何か”がふつふつと目を覚まします。そしてその”何か”は、施設に新たに入ってきた女の子ジェイデンに出会うことで、はっきりと大きく動き出し、人知れずグレイスを苦しめていきます。
【父親との間に問題を抱え施設に来たジェイデン。反抗的な態度からすこしずつグレイスに心を開くけれど・・・】
普段は冷静なグレイスですが、ジェイデンのこととなると、感情をあらわに取り乱します(上司のオフィスで彼のお気に入りのランプをぶち壊すほど・・・)。その秘密は、どうやら彼女自身の過去にあるようです。そんな彼女に優しく寄り添い支えようとする恋人メイソンでしたが、グレイスは彼にも苦しみを打ち明けられず、壁をつくってしまいます。
グレイスは彼女の過去の苦しみを、ジェイデンは誰にも言えない今の苦しみを乗り越えられるのでしょうか。その鍵は、ふたりを”見守る”ひとたちの存在にあるようです。
【何も話さなくても、ふたりの傷は共鳴する。それは癒しとなって、それぞれの人生に立ち向かう力を与え合います】
変えられないことと変えられること、生きていく上で両方あると思います。たとえば、”過去”は変えられませんが、ハッピーではない”現在”はアクションを起こせば、結果はどうあれ変化は生まれます。大切なのは、しあわせになることを決めて”未来”をみること。変えられない”過去”はジャッジせずにそのまま受け入れて(難しいけれど)、自分の命が「しあわせ」だと感じる光の方へ人生の舵をとること。それはとても勇気のいることですが、見守ってくれている人がひとりでもいれば、なんとか一歩が踏み出せそうです。
【グレイスに心の安らぎを与えてくれるメイソン。混乱の渦の中にいる彼女ですが、彼が光であることははっきりとわかっています】
そんなことを、まさに登場人物たちを”見守る”だけで、感傷的な視点を入れずに彼らを切り取るこの映画は教えてくれます。とてもチャレンジングな内容の映画ですが、成功の多くをグレイスを演じた主演女優ブリー・ラーソンの素晴らしい演技が担っていて必見です。
ありのままの自分でOK!そして光へ向かって歩こう!
シリアスな内容ではありますが、ポジティブに生きるエッセンスがガツンと詰まった『ショート・ターム』、今週末「おうちシネマ」にいかがでしょうか?
text:kanacasper(カナキャスパ)(映画・カルチャー・美容ライター/編集者)
編集を手がけた韓国のカリスマオルチャン、パク・ヘミン(PONY)のメイクブック『“かわいい顔”はつくるもの! 秘密のオルチャンメイク』(Sweet Thick Omelet/DVD付/¥1,500・税別)が好評発売中。こころもからだも豊かに美しくしてくれる日々の”カケラ”をブログで収集中。
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