身体と同様に、こころもエクササイズが必要。映画を観ることで、こころの筋肉をしっかりと動かし、“きれい”を活性化しませんか? そんな“きれいになれる”映画を毎週紹介する【うるおい女子の映画鑑賞】。
第14回のテーマは「2016年は”わたし”を着る!」。ご紹介するのは『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』 。超個性的なファッションでNYの街をランウェイにして日々を生きるシニアの女性たちを追ったドキュメンタリー映画です。
『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』 DVD発売中 ¥3,800(税抜) 提供:ニューセレクト/販売:アルバトロス Ⓒ 2014 ADVANCED STYLE THE DOCUMENTARY LLC. All Rights Reserved. ※2016年1月1日現在
どこへ行って、何を食べて、何をして、何を着るか。
そのひとつひとつが個性であり、生き方であるはずですが、気がつけばわたしたちは溢れる情報に導かれるまま、画一的なものへ向かってしまいがちですよね。ファッションも、モデルや女優の誰かが着ると人気に火がつき、「即完売!」なんて事態もよく目にします。
この映画の原点は2008年に、当時20代だった監督アリ・セス・コーエンが始めたファッション・ブログ「Advanced Style」です。そこには、これまでフィーチャーされることのなかった60歳以上のファッショナブルな女性たちが自由に自分らしく着飾るポジティヴなエネルギーが溢れていて、瞬く間に人気ブログに。2012年にはブログを飛び出し写真集まで発売されました。本作はそのなかから7人のマダムたちを追ったドキュメンタリー映画です。
【右から撮影当時79歳!80歳!! 93歳!!! 年齢を超越している彼女たち】
彼女たちは本当に楽しそうで、自信とエネルギーに溢れていてオープンマインド、何よりとても輝いています。「自分の服を見せびらかしたい」とNYの街をいつも自転車で疾走しているマダム、「人生という劇場のために毎日着飾る」というマダム、「ファッションは体を土台にしたアート」というマダム…これまでの人生やバックグラウンドはまちまちですが、年齢を超越した魅力で溢れています。
【かつては大手出版社でバリバリ働き、女性の社会進出の旗手だったジョイス。ポロっと語る過去がすごすぎたりするエレガントで素敵なシニア。突然オペラを披露するお茶目な一面も】
【撮影中にAdvanced StyleがきっかけでLANVINの2012年秋のキャンペーン・モデルに大抜擢! 81歳にして175cm、54kgで背筋の伸びた元ダンサーのジャッキー】
【ビル・カニングハムのストリート・スナップの常連のジポラ。最年少(62歳!)らしくビアンキの自転車でマンハッタンを疾走!】
彼女たちの個性的なファッションにはそれぞれ、”スタイル”があります。長年自分と向き合い、どうしたら自分が魅力的に見えるか、どんなファッションをしたら自分がハッピーでいられるかを知り尽くしているのです(「異性にもてない」という葛藤も乗り越えている)。
ファッションはただ外面的なことではなく、それは自分の表現なのです。好きなもの、似合うもの、好きだけど似合わないもの、何十年にも渡る楽しい試行錯誤を経て、今のスタイルが確立されています。だから面白いことに、彼女たちのファッションは”個性的”とひとくくりにしてしまえばそれまでですが、それぞれまったく違っています。不思議と人となりが想像できるし、それまでの人生が自ずと滲み出ているのです。
【楽そうに談笑するマダム2人。自分とは違う他人にも寛容でリスペクトし合うところに自由な精神が見受けられる】
だから、彼女たちのファッションを見ているだけでも十分楽しいのですが、カメラの前で語られる言葉がもはやファッションの域を超えていて、人生哲学と等しいものになっているのが驚きなのです。
つまり、「自分とは何者か」という禅問答を彼女たちはファッションを通してストイックに繰り返してきたということ。だから、自分のいいところも、ちょっとダメなところもすべて受け入れて、その上で着飾る彼女たちにスタイルがあるのは当然のことなのです。
どこへ行って、誰と会っても、常にわたしらしいファッションで、わたしであること。その毎日の積み重ねが、呼吸をするようにスタイルを作っていきたのです。歳を重ねるほどにスタイルは成熟していくので、”老い”はここでは必ずしもネガティヴなものではありません(むしろどんどんタガが外れるらしい)。若さに執着することなく、着飾って今を全力で楽しむ彼女たちの生き様と豪快な笑い声は、老いに対する概念を変えてしまうほどに美しいのです。
【アッパー・イースト・サイドで40年以上ブティックを営むリン。彼女の歯に衣着せぬ的確なアドバイスを求めて全米からお客さんがやって来る】
「今日は会社でずっと内勤だから」「休日ですこし買い物にでるだけだから」「どうせだれも見ていないし…」なんてズボラな根性を叩き直して、「私自身を着るんだ!」というマインドでマイ”スタイル”を確立し、女に生まれてきたことをもっとポジティヴに思い切り楽しみたい!
どこのブランドの何を着る、ではなく”わたしらしさ”というスタイルが一番大切なのだと教えてくれるマダムたちに元気をもらえる一本です。お正月のお休み中の「おうちシネマ」にいかがですか?
text:kanacasper(カナキャスパ)(映画・カルチャー・美容ライター/編集者)
編集を手がけた韓国のカリスマオルチャン、パク・ヘミン(PONY)のメイクブック『“かわいい顔”はつくるもの! 秘密のオルチャンメイク』(Sweet Thick Omelet/DVD付/¥1,500・税別)が好評発売中。こころもからだも豊かに美しくしてくれる日々の”カケラ”をブログで収集中。
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