【うるおい女子の映画鑑賞】 第46回『ブルックリンの恋人たち』(2014年・米)
「女性」の視点で映画をみることは、たとえ生物学的に女性じゃなくても日常では出会わない感情が起動して、肌ツヤも心の健康状態もよくなるというもの! そんな視点から今回は『ブルックリンの恋人たち』(2014年・米)を紹介します。
いきなりネタバレで失礼しますが、この作品は超イケてる男女が出会って、超イケてる別れ方をするという”寓話”。この男女のスマートな盛り上がりと引き際を理解できない貴女は、ずばり「“痛い女”の気あり」です。
|ストーリー
モロッコで独り人類博士号を目指していたフラニー(アン・ハサウェイ)は、弟ヘンリーが交通事故に遭い意識不明だという知らせを聞き、ニューヨークへ舞い戻ります。ミュージシャン志望で大学進学を諦めようとするヘンリーと口論し、数ヶ月前から口も利いていなかったフラニーは自責の念に駆られていたところ、ヘンリーの日記を発見。そこに記されていたヘンリーのお気に入りのダイナーやバイト先のギター店を巡るうち、彼が敬愛していたミュージシャン、ジェイムズ(ジョニー・フリン)と出会い、ヘンリーを通して2人の間に親密な時間が流れていきます。
【ジェイムズを演じるジョニー・フリン。イケメン!】(出典:映画『ブルックリンの恋人たち』公式サイト)
|“痛い女”か“イケてる女”か? そんなリトマス紙的な作品
アン・ハサウェイ演じるフラニーが、頭がよくて、美しくて、肩の力が抜けていて、いわゆる最強の“イケてる女”なことにとにかく感銘を受けるこの作品。ただキレイでモテるだけの女とは一線を画し、この聡明な女性キャラクターの一挙手一投足には、“痛い女”の対極にある“イケてる女”になるためのヒントが隠されています。彼女と、彼女のひと夏のこの恋に、共感できるか否かであなたの「痛い女度」が判定できるかも知れません。
|“イケてる女”が男を誘うとき
売れっ子ミュージシャンのジェイムズに彼のライブ会場で、ひるむこともなく自然体に話しかけて知り合いになったフラニー。後日弟を気にかけて病室に尋ねて来てくれた彼を、別れ際に軽やかにライブに誘います。すこし恥ずかしそうに、だけど会話の流れでさりげなく。
出典:映画『ブルックリンの恋人たち』公式サイト
「今思いついたから誘ってみた」というライトなアティチュードでありつつ、すこし不安げに「どうかな?」と上目づかいする女子を断れる男子はいるのでしょうか。
|“イケてる女”のデート服
いくら自分が知らなかったとはいえ、そこそこ人気のあるイケメンミュージシャンと初デートとなったら、勝負服は果てしなく吟味したいところ。ところがフラニーは、計算された引き算とかではなく、割と「え?」とこちらが拍子抜けするような服でデートに現れます。
出典:映画『ブルックリンの恋人たち』公式サイト
ですが、ありのままの自分を愛していて、余裕があって、堂々としていて(あと顔がアン・ハサウェイ仕様だから)、素のままの彼女はとても魅力的です。そんなところにイケメンも「この娘はほかの娘たちとは違う!」と興味をそそられるのです。
|“イケてる女”の恋の終え方
※これよりネタバレ含みます
フラニーとジェイムズを出会わせて繋ぎとめているものは、昏睡状態のフラニーの弟の存在。そのことを惹かれあいながらも2人はお互いに十分に理解しています。さらに、ジェイムズはツアー先のニューヨークに一時的に滞在している身で、フラニーもモロッコに戻って進むべき道があります。
出典:映画『ブルックリンの恋人たち』公式サイト
2人はこの恋が運命的なものであると同時に、寓話的なもので、だからこそ美しいということを最初から受け入れているのです。だから、ジェイムズがツアーを終えて弟が目を覚ましたとき、傷つけ合うことも過剰に悲しむことも運命を恨むこともなく、すーっと潮が引くようにふたりは離れていきます。とくにフラニーの引き際は、静かで上品で聡明で「記憶に一生残る女になること間違いなし!」な程に美しいのです。
人生に一度、あるかないかの運命的なひと夏の恋。その寓話にしがみつくのか、寓話と悟って手放すのか。。。ここに“痛い女”と“イケてる女”の境界線がくっきり現れるはず。フラニーのような恋ルール(特にスマートな恋の終え方)、あなたには理解できますか?
text:kanacasper(カナキャスパ) 映画・カルチャー・美容ライター/編集者
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