【うるおい女子の映画鑑賞】 第51回『中国の植物学者の娘たち』(2006年・仏=カナダ)
「女性」の視点で映画をみることは、たとえ生物学的に女性じゃなくても日常では出会わない感情が起動して、肌ツヤも心の健康状態もよくなるというもの。そんな視点から今回は『中国の植物学者の娘たち』(2006年・仏=カナダ)を紹介します。
出典:IMDb.com
美しくて棘があって官能的で哀しく、とても女性的で感覚的かつ知性的な本作は“愛”について胸をずどーんと突かれますので、覚悟して向き合うことをオススメします。
|ストーリー
幼い頃に両親を亡くして以来、孤児院で育ったミンは、研修生として湖に浮かぶ陸の孤島にある植物園に住み込むことになります。厳格な教授とその娘アンとの暮らしが始まり、孤独なミンとアンの間には深い絆が生まれ、やがて強く惹かれ合います。
ある日、軍人であるアンの兄が帰省し、短期間でミンにプロポーズします。結婚を嫌がるミンにアンは「兄と結婚すれば私たちはずっと一緒にいられる」と結婚をすすめます。やがて2人の運命は大きく翻弄されていきーー。
※以下ネタバレが含まれます。
|女が求める究極の恋愛の形?!
本作は同性愛を扱っていることで、中国での撮影許可がおりずベトナムで撮影されたのですが、その美しい植物や景色、中国古来のエキゾチックな文化を背景に、ふたりの人間が惹かれ合い、葛藤し、永遠の愛を誓うに至るまでのこころの機微がとても繊細に官能的に描かれていてため息もの。
出典:IMDb.com
ミンとアンのお互いを愛でる眼差し、2人の間の甘く湿度のある空気は、精神的なつながりの強さと太さを感じさせます。
一方、ミンの結婚相手であるアンの兄の強引さと粗暴さは緊張の空気を生みます。過去(あるいは今でも)望まない結婚に人生を翻弄されてきた女性たちの抑圧と忍耐を象徴するかのよう。同性愛というと特殊な分野のように思えるかもしれませんが、2人の人間がこころから愛し合うときの静寂と官能的な温もりは、まさに多くの女子が求める「愛の理想郷!」ではありませんか。
|なんか後ろめたさを感じてしまうのは……
とにかくラストが衝撃的。どうか色モノ映画としてではなく、自身の愛の耐性について問われる映画として観ていただきたいと思います。
そして、ミンとアンの愛の結末に何か後ろめたさを感じるあなた。「魂で恋愛していますか?」そんな問いかけが痛烈に胸に刺さる作品です。美しさと鋭さ、甘美さと知性をもった一本、覚悟して向き合ってくださいね(私は打ちひしがれました……)<text:kanacasper(カナキャスパ)>
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