「人生は近くで見ると悲劇だけれど、遠くから見ると喜劇である」とは、イギリス生まれの喜劇王チャップリンのことば。生きていればいろんなことがありますが、この言葉を思い出すと、ふっとこころが軽くなります。
こういうシニカルでユニークな視点はイギリス人のお家芸で、わたしはそんなイギリス映画が大好きです。小規模だけれど良作がいっぱいだし、イギリスファッションをチェックするのも楽しい♥
イギリス映画のセンスのいいユーモアに触れ「人生は喜劇!」というテーマのもとに紹介したいのが『フォー・ウェディング』。ロバート・パティンソン(『トワイライト』シリーズ)の登場以前、イギリス人イケメンの代名詞として長く王座に君臨していたヒュー・グラントが主演です。1994年のヒューはまさに”最盛期”。今みても胸がときめくイケメンです(イギリス英語がまたたまらなくセクシー!)。
『フォー・ウェデイング』ブルーレイ発売中 ¥2,381(税抜) 発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ※2015年12月12日現在 (C)2011 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
30過ぎのチャールズ(ヒュー・グラント)は、女性とのカジュアルな付き合いは楽しんでいるけれど、結婚には及び腰なイギリス男子。花婿付添い人を頼まれた友人の結婚式に寝坊してぎりぎり駆け込みますが、そこでアメリカ人のキャリーに出会い一目ぼれします。
惹かれ合ったふたりは一夜をともにしますが、チャーリーの煮え切らない態度に、ふたりの関係は発展することなく朝を迎えます。出会ったときは”イギリス男子”の切り札を切りまくりながら、積極的にアプローチしていたくせに、キャリーに「で、どうするの?」と迫られると逃げるというチャーリーは、「こういう男いるいる!」と思わず言ってしまうほど、フラフラしてるモテ男の典型!
【いつも、そのときの素直な気持ちで行動しているだけなんだけど、周りの女の子を傷つける男子っていますよね】
チャーリーに遊ばれてしまったキャリーがかわいそう?いえいえ、この映画はそんな品行方正なラブストーリーではなく、ラブストーリーの仮面をかぶったアンチ・ラブストーリーとも言える、シニカルでロックな映画なのです。
チャーリーはキャリーに一目ぼれしたとき、「あの娘はだれ?」と女友達に探りをいれますが、女友達は間髪入れずにこう答えます、「ア○ズレよ!」と・・・・・・。その真相はさておき、数ヵ月後、チャーリは別の結婚式でキャリーに再会し、彼女から衝撃の事実を聞かされます。
【なんか応援できないふたり・・・。なんかこの女好きになれない・・・。なぜでしょう?】
再会して、彼女から衝撃の事実を告白されてもなお体を重ねるふたり。そして街で偶然再会をしますが、それでもふたりはすれ違ったまま。
【偶然の再会・・・やっぱり運命? ダメ男を演じさせるほど輝くヒュー・グラント!】
『フォー・ウェディング』というタイトル通り、4つの結婚式を通してチャーリーとキャリーの関係は変化していきます。人生において、間違いなく最もドラマチックな局面である結婚式を通して、彼らはいろんなことを感じていくのです。
【キャラの濃い友人たちに紛れるとチャールズはまともに見えますが、みんな等しく喜劇を生きています。それでよし!】
すれ違ったり、傷つけあったり、裏切られたりの大恋愛を経てのゴールイン!というのがラブストーリーでのカタルシス。この作品も同じフォーマットなので、当然ラブストーリーと世間では思われています。だけど観ていて思うはずーー「なんだよこのカップル!全然応援できない!」と。だって周りを傷つけまくってるし、不道徳なところもあるし、恋愛に酔ってるだけだし・・・・・・
実はこれこそがイギリス特有のシニカルなユーモア。主人公ふたりの胸をはれない恋愛遍歴を、ラブストーリーのフォーマットにはめ込んでみせて、その喜劇っぷりを浮き彫りにしているのです。脚本は、『ノッティングヒルの恋人』『ラブ・アクチュアリー』『ブリジット・ジョーンズの日記』等の脚本を手がけてきたリチャード・カーティスですが、それでも最後には「それが人生!人生は喜劇!」と大きく包み込む人間賛歌になっているところがさすが!
【結婚式に出席すると”愛”について考えさせられますよね】
いいことも悪いことも、自分のこととなるとつい客観性を失って、お花畑になったり、悲劇のヒロインになったり・・・誰でも身に覚えがあるのではないでしょうか。「人生は喜劇!」というちょっとシニカルなイギリス的視点をもっていれば、冷静になれたり、気楽になれたり、こころに余裕がもてる気がします♪ いいとか、間違ってるとかじゃやなくて、ただ”喜劇”なのです。
1994年の作品ではありますが、軽快で今観ても色あせない魅力のある作品です。今週末、「おうちシネマ」にいかがでしょうか?
text:kanacasper(カナキャスパ)(映画・カルチャー・美容ライター/編集者)
編集を手がけた韓国のカリスマオルチャン、パク・ヘミン(PONY)のメイクブック『“かわいい顔”はつくるもの! 秘密のオルチャンメイク』(Sweet Thick Omelet/DVD付/¥1,500・税別)が好評発売中。こころもからだも豊かに美しくしてくれる日々の”カケラ”をブログで収集中。
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